窓から快適、リフォームレポート -静岡県 K邸-
立地 | 静岡県浜松市 |
---|---|
住宅形態 | 鉄骨造(1984年竣工) |
間取り | 7DK |
リフォーム工期 | 2011年6月(1日間) |
窓リフォームに使用した主なガラス | エコガラス(アルゴンガス入り) |
利用した補助金等 | 住宅エコポイント |
東に天竜川、西に浜名湖、南に遠州灘。多様な自然環境に囲まれた浜松市は、温暖な気候のもと日本有数の日照時間を誇るまちです。
一年を通じて吹く西北西の風は、夏は暑さを和らげてくれる反面、冬には<遠州のからっ風>と呼ばれる強風となり、気温以上に寒さを感じさせることも。
そんな話をしてくれたのは、江戸時代から代々この地に住み続けてきたKさんご夫妻です。1984年にハウスメーカーに依頼して建てた鉄骨造の住まいをエコガラスでリフォームしました。
一見して窓の多いK邸は、明るく風通しがいい反面、夏の強い日差しが悩みでした。
「朝は東から日の光が一斉に入り、夕方になれば西日ですごく暑い。すだれと緑のカーテン両方やっていました」と奥様。
畳も焼けて熱を持ち、寝ている間に下から暑さがくるため、西の窓は午後には雨戸を閉め、日が落ちてから風を入れていたといいます。
家の正面に当たる南側は上下階とも軒が出ていて直射日光は入らないものの、とくに2階のベランダの照り返しがきつかったとのこと。
つまり<夏は常にどこかが暑い家>だったのです。
窓に注目したきっかけは、30年点検でやってきたハウスメーカーの営業マンに住まい全体のリフォームを提案されたことでした。
ご子息夫妻も戻ってくると決まり、窓も含めて新しいものに変えていこうと一生懸命考え始めた、と振り返るKさんいわく「ハウスメーカーの言いなりでやるのは、いやだったんです。インターネットや本を読み始めたのはそこからですね」
この<自ら調べて決める>スタンスを選んだのは、「いろいろ質問しても担当者からすっと答えが返ってこなかったから(奥様)」だそうです。
「提案された建材がどういう製品なのか聞くと、メーカー名を言ってくる。でもこちらが知りたいのはどういう素材でできているのか、他とどこが違うのか、なんですよ」
最終的な窓リフォームは、地元のガラス販売店・平野硝子にゆだねられました。
<エコガラスを使ってほしい>というオーダーにふたつ返事でこたえ、質問に対する回答・対応も「ハウスメーカーよりすべてが上だった」とご夫妻が太鼓判を押す、窓ガラスのプロフェッショナルです。
K邸のリフォームでは、もとからあるサッシを残してガラスだけをエコガラスに交換する方法が選ばれ、20箇所近くある窓の工事はたった1日で終了しました。
「やってみたら、すごく短時間でできるんですね。みなさん知らないと思います」
工事が行われたのは暑さが増し始める6月で「そのときはもう緑のカーテンやすだれを始めていたのですが、工事してからは、やめちゃいました」
かつて緑のカーテンがあった東向きの窓を持つ茶の間は、ご夫妻が一日のうちでも長い時間を過ごす場所です。
「工事前は、朝日が射し込む間は暑くてとてもいられなかった。でも今は、暑いなあと言いながらもいられるんです。窓を開けて、扇風機だけつけて」とKさん。窓越しに日が当たっていても平気でいるんですよ、と横から奥様がつけ足しました。
同じく緑のカーテンをを吊り、西日がきつい時間帯は雨戸を閉めていた西向き窓も「今はカーテンだけで大丈夫。夕方は風がよく入ってきて涼しいですよ。だからいろんな仕事は夕方やるようにしているんです、遊んでいるわけじゃなくてね(笑)」
玄関ホールを挟んで東西に部屋があり、北側に水まわりが配置されたK邸は、各室をつなぐ開口部が多い回遊性のある家です。
エコリフォーム後、夏は窓をすべて開けて家じゅうに風を通し、エアコンいらずの空間を実現しています。「開けっぴろげで、自然のままでいられます」
壁以上に熱を通しやすい窓の断熱性能が上がって外の熱気が入り込みにくくなり、閉め切ってクーラーをかけずとも室内が快適に保たれるようになったのでしょう。とくにK邸のように窓の多い住宅では、効果がよりわかりやすく現れることも考えられます。
以前はいわゆる冷房病で、極端な温度差がある部屋間の移動がつらく、医師からもあまりクーラーをつけないよう言われていたというKさんにとって、心身ともに心地よく、安心な住まいになりました。
寒い時期のエコガラスの効果についても、うかがってみましょう。
リフォーム以前のK邸の暖房機器は、各室に置かれたオイル-ヒーターをメインに、足りないときは電気ストーブを使用。あとは掘りごたつに入って団欒していました。
エコリフォーム後、こたつはお役御免になりましたが、実はこれこそ、Kさんが念頭においていたことだったのです。
「家の中全体が暖かくなればいい、とずっと思っていてね。僕は暖かいところにいばって座っているのに妻は寒いお勝手にいる、では気の毒でしょう?
以前務めていた職場は女性も多くて、いつも対等に和気あいあいとやっていたから、そういう考え方もしみついているし。子どもらも帰ってくるんだから、家族みんな平等にしないと」
少し照れたように話すKさんに「そうね、こたつは背中や周りが寒いから、やっぱり部屋じゅう暖かい方がいいよね」と笑いながら奥様が言い添えました。
思いのこもった、K邸の<全館暖房>です。
安全・健康・省エネ面でも、エコガラスは貢献しています。
寒さを感じていた洗面・脱衣スペースは他の部屋と変わらない体感温度となり、入浴時のヒートショックの心配がなくなりました。窓に直接当たる強い北風が引き起こしていた結露も解消しました。
さらに光熱費は、ご子息夫妻が戻って二世帯住宅となる以前までは「標準を下回る安さ。何がそんなに違うんだろう? と思うくらい(笑)」違いが出ていた、とKさんは振り返ります。
「電気料金とか細かい数字以上に<体感>に効果が現れているんですよ。ああやってよかった、ということですね」というご夫妻が口をそろえるのは「エコリフォームはとにかく自分たちの目で見て、調べ、話を聞くことが大事」
「新しい技術や製品を紹介されたら、パンフレットの数値を見るだけでなく実際に見てみることです。
僕らはエコガラスを入れるとき、実際に使っている近所の家を訪ねて、本当に効果があるのかをそこのご家族に聞いてみたんですよ。営業の人では、本音はやっぱりわからないでしょ(笑)
価格も安いものではないのだし、これから窓リフォームを考える人には、できることはすべてやってみてほしいと僕は思う」
率直で説得力のある言葉です。
奥様も「ガラスは種類が多いので、それぞれの良さを知ること。窓の方角によってどんなガラスを使えばエコになるのか、場所によって組み合わせを考えたり、さらには<本当にエコガラスが必要なのか>まで考えた方がいいと思います」
多くの資料を読み込んで知識を増やし、ご近所のエコガラスユーザーのもとへ足を運び、工事決定まで施工側に数多くの質問をしてきた<自ら考え行動する住まい手>ならではの言葉でしょう。
おふたりの話に、工事を担当した平野硝子の平野尚司さんも「最初から家全体を! ではなく、もっと手軽にまずひと部屋おためしでやってみて、効果があれば広げていくやり方もあります」と、うなずきました。
実はKさんご夫妻はそれも実践しています。窓のリフォームが終わって1年後、玄関扉を断熱ドアに換える際に、明かり取りの窓をエコガラスにしたのです。
「以前から玄関は、お客さんが来ておしゃべりしていると暑くて。エコガラスにしたら違うかな、と思って」奥様の言葉に「気に入っちゃったんだなあ」とKさんが続け、笑い声が上がりました。
インタビューの間じゅう、一貫して流れていたのは、おふたりの中にある進取の気性です。
江戸期には庄屋も務めたという歴史ある本家を守り、未来に伝えていくために、昔からの流れを残しつつ現代的な新しさを積極的に取り入れようとする姿勢。人生の先輩のりんとした姿に、背筋が伸びる思いでした。