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事例紹介 / 新築

リゾートスタイルで高断熱
窓はデザインエコガラス

千葉県 A邸

立地
千葉県御宿町
住宅形態
枠組壁工法(2×6+2×4)2階建
住まい手
夫婦
延床面積
116.06㎡

今月の家を手がけた工務店

つるおか工務店
https://daiku.co.jp/

セカンドハウスから定住へ。海の近くの新たな住まい

切妻屋根に白い壁、大きな窓のある家を訪ねました。
ここは太平洋を望む外房・御宿町の高台に広がる住宅街。別荘利用も多く、デザイン性の高い家々が連なっているエリアです。

A邸が完成したのは2019年秋のこと。「明るくて開放的な南欧風の住まいが希望でした」と語るご夫妻の思いを映し、リゾートに迷い込んだようにどこか気持ちが高揚する佇まいで迎えてくれました。

隣県・埼玉在住だったご夫妻はこの家を2年間別荘として使い、その後Aさんの早期退職を機に定住したといいます。

リゾートスタイルで高断熱 窓はデザインエコガラス-インタビュー

東面外観。海側を向き、たくさんの窓で景観と太平洋からの爽やかな風を取り込む

「次の仕事に向けて充電中です」というAさんはお隣のいすみ市出身で、奥様とともにこの地を選んだ理由を”雰囲気が明るく、近くに兄弟が住んでいる”ことを挙げ、さらに「最寄駅に特急が停まるし大きなスーパーもあります」とつけ加えました。
都心から列車で2時間かからず、自動車道路も整備され、昨今のリモート勤務形態にも十分応えてくれるロケーションでしょう。

23区内の勤務先では激務続きだったAさんは、この家に住み始めてがらりと暮らしが変わりました。十数キロのウォーキングを日課にして20kg超のダイエットに成功、すっかり健康を取り戻したそうです。

リゾートスタイルで高断熱 窓はデザインエコガラス-外観

リビングから振り返る。ロフトを載せた白壁の向こうはホールとエントランス、水まわりを配置。階段下が収納スペースとして活用されている

四方に窓がいっぱい。南欧スタイルの家

玄関からホールを抜けると、視界がぐんと広がりました。
メインスペースであるLDKは1階の2/3を占める一室空間です。中央にダイニング、右手にリビング、左手にキッチンを配置していますが、ダイニングテーブルと大ぶりのソファ、テレビとグリーン以外に家具らしいものは見当たりません。“非日常”なしつらえです。

そして目に入るのは窓、窓、窓…
テラスにつながる東の正面では開き窓の両脇に大きな掃き出しが並び、吹き抜け上部は半月窓を含むデザイン色の濃い開口が浮き上がります。教会内部に足を踏み入れたようです。
キッチンシンクの前にも窓、リビング南壁にも窓、さらに天井を張らない切妻屋根に天窓。明るくないはずがありません。

「間取りがゴチャゴチャしない大きな空間を提案しました。せっかくこっちにきたのに、都会と同じでいいの? 普通の家じゃつまらないですよね」
と、設計施工を担当したつるおか工務店の代表取締役・鶴岡敏雄さんが豪快に笑いました。
御宿町を拠点にアーリーアメリカンタイプの2×4や欧風デザインの輸入住宅を多く手がけ、リゾートスタイルかつ高い性能を備えた住宅の建設に取り組む工務店のトップです。

リゾートスタイルで高断熱 窓はデザインエコガラス-玄関

吹き抜けのLDKはシンメトリーが強調され、独特の空気感だ

白壁は室内側が珪藻土、外壁は漆喰仕上げ。ポーチに張られたタイルや土台部分の石張りがオレンジ色のスペイン瓦の屋根と調和しています。床はパインの無垢材で裸足での足ざわりを重視。サーフィンをはじめマリンレジャーが盛んな土地柄も表すようです。

加えて施主のAさんいわく「裏表のない家なんですよ」
「ハウスメーカーが建てる家って“裏”があるでしょう? そうしたくなかった」ぐるりと外を一周すれば、確かに“ここは裏だ”と思わせる面がありません。よくある空気抜き用の小開口ではない、しっかりした窓がついているのです。
こんなところも、A邸が醸し出す明るさの一因となっているのでしょう。

リゾートスタイルで高断熱 窓はデザインエコガラス-仏間

ダイニング正面の開き窓は雰囲気満点。当初は嵌め殺しだったが鶴岡さんのサービス精神で仕様変更

リゾートスタイルで高断熱 窓はデザインエコガラス-中廊下

ローマンシェード付きのリビング窓は、上部に半月型窓のある縦長のフォルムがどこかお城や教会建築をイメージさせる

開き、上げ下げ、天窓。多種多彩なエコガラス窓

地元育ちの鶴岡さんは「自分が寒がりで暑がりだから、暖かい家をつくりたいんですよ」と話します。
間近に迫る太平洋の海風や湿気を含む大気など、この地の気候風土を十二分にわきまえたうえで「うちでは北にも窓をたくさんつけます」。
エコガラスは当然ですよ、といった風情で笑っています。

A邸の窓はアルゴンガス入りエコガラス。白色の樹脂サッシで統一しています。ガラスの中空層内に入っている格子が住まい全体のデザインを決定づける要素にもなっています。

リゾートスタイルで高断熱 窓はデザインエコガラス-中廊下

テラスにつながる2箇所の掃き出し窓は幅一間半の大開口。デザインのカナメである樹脂製の格子はエコガラスの中空層に仕込まれ、窓と一体化している

それぞれのスペースに合わせ、開け閉めの仕方も多彩。
キッチンシンク向かいの大きな窓は、ハンドルを回す外開きタイプです。
「シンクの奥行きが60cm以上あって、窓まで手が届かないんですよ」と話す奥様の一番のお気に入りが、このアイランドキッチンといいます。パンやお菓子づくり用に作業台を大きめにし、テラスの掃き出し窓からの外光も入っていかにも使いやすそう。つるおか工務店による造作です。

ホール奥の水まわりや玄関脇のシュークローク、そしてリビングには上げ下げ窓が選ばれました。
アメリカンスタイルの住まいに似合う雰囲気に加え、好みの位置まで上げて留められるので換気時の風量調整も問題ありません。

リゾートスタイルで高断熱 窓はデザインエコガラス-Oさん居室

白で統一されたアイランドキッチンはA邸の中核スペース。作業台上部のガラスのペンダントライトは奥様が選び、ここから住まい全体のデザインイメージを広げていったという

リゾートスタイルで高断熱 窓はデザインエコガラス-浴室

カフェカーテンがかかる水まわりの上げ下げ窓。明かり取りのほか、エントランスホール付近の通風も担う

そして4つもあるエコガラスの天窓は、LDK側のふたつが電動、ロフト側のふたつは手動の外開きです。

最高天井高さ6mのリビングダイニングの天窓は、キッチン脇に集められたスイッチ群で開閉やブラインドの出し入れができるほか、雨天時は自動で閉まります。雨の多い日本の気候ではありがたい機構でしょう。

天窓が取り込む自然光の量は、壁面窓の3倍といわれます。
もとよりAさんご夫妻が望んだのは“雨が降っても照明なしで明るい家”。シーリングライトがあるのは寝室やトイレだけで、ほかはアンティーク調のデザイン照明がほとんどです。

「アメリカの住宅のように大きな屋根ならドーマー窓をつけてもいいけれど、日本の家のサイズは天窓の方がいいですね」鶴岡さんがうなずきました。

リゾートスタイルで高断熱 窓はデザインエコガラス-北外観

南北に葺きおろされる切妻屋根の天窓を開けてもらった。ちなみにA邸はオール電化住宅だが太陽光発電を導入していない。スペイン瓦の屋根の美しさを失いたくないのがその理由

夏は窓からの涼しい海風、冬はストーブ1台で快適

寒がりで暑がりの鶴岡さん指揮のもと、A邸では壁や屋根など開口部以外の建物外皮も厚い断熱材でくるまれています。
冬暖かく夏は涼しく、快適に室温を保つ方法もうかがってみましょう。

冬場は大きめの石油ストーブ1台のみ。これだけの気積なのに? と驚きますが「この家は実は暑いんですよ」とAさん。
真冬でもシーリングファンを回さずストーブをつけていると、特にロフトはとても暖まり「泊まりに来ていた友人たちが夜中に暑くて大変な目に遭った」と笑います。
エコガラス窓とがっちり断熱された建物外皮とで、室内空気が外に流れ出ていない証拠でしょう。

リゾートスタイルで高断熱 窓はデザインエコガラス-洗面

ロフトには都内在住・勤務する娘さんがしばしば泊まりに訪れ、リモートでの仕事場になることも。本来は“友達が遊びに来たときの雑魚寝用スペース(Aさん)”といい、冬場はLDKからのぼってくるストーブでとても暖かい。夏は天窓のほか、西を向く窓を開け放つことで重力換気が行われる

2面採光の寝室では「朝起きるときも寒くないし、寝間着は1枚少なくなりました」と奥様はにっこり。
以前住んでいた家ではダウンを着て寝ることもあったといいますが、ここに来てからは設置されたエアコンも使わず、起床後はLDKのストーブを薄くつけてすぐにオフ、夕方までそのままですと話します。

一方、夏の日中は窓開けでの調節がメインです。
「全部開けて海風を通しています。夏は涼しいですよ!」

高台にあるA邸から御宿の海辺までは、直線距離で1kmもありません。太平洋を渡る海風が一年中吹いてくるのです。
テラス側の窓から入った風は吹き抜けをのぼり、熱くなった室内空気とともにロフトの窓から出ていきます。重力換気と呼ばれるお手本のような通風が、夏の日常というわけです。

窓が多い分、強い日射や西日も気になりますが、西側には隣家も建ち「2時か3時くらいで日が陰ります」
高窓や天窓からもきませんか? の問いに「キッチンやダイニングテーブルには少し射すので、そのときは避けています。でも私の居場所になっているリビングのソファにはこないから、大丈夫」Aさんがいたずらっぽく笑いました。

ちなみに虫が入る夜だけは窓を閉めてエアコンをつけるとのこと。別荘地らしい環境の良さがうかがえる話です。

リゾートスタイルで高断熱 窓はデザインエコガラス-南窓並び

A邸唯一の出窓がある寝室。設置済のエアコンを使ったことはない

リゾートスタイルで高断熱 窓はデザインエコガラス-縦長窓

ダイニングでAご夫妻にお話をうかがった。竣工後も友人としてつきあいが続く鶴岡さんにも同席いただく。この家の雰囲気にたがわず笑いの絶えない明るい取材となった(撮影時のみマスクを外していただきました)

セミリタイヤ、あるいは第二の人生へと向かうタイミングで新たな住まいを得る際のひとつのスタンスを、A邸は見せてくれているのかもしれません。

ロケーション、建築のデザインと性能、どんな間取りをつくりどう使っていくのか。今まで住んできた家とは少し違っても、本当に心地よく居られる空間を見つめ直したとき、人の心と暮らしはこんなにも伸びやかになるのだ…と教えられた気がしました。

房総の海と空を映すように鮮やかな青色の玄関ドアは、新しい人生を開ける扉そのものだったのかもしれません。

リゾートスタイルで高断熱 窓はデザインエコガラス-南窓並び

鮮やかに塗られた玄関ドア。青い扉はスペインの住宅に多いという。脇のシュークロークにつけられた上げ下げ窓がエントランスの採光と通風を担当

取材日
2022年2月14日
取材・文
二階さちえ
撮影
渡辺洋司(わたなべスタジオ)

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